一生涯の成長と変化を見つめ、人にやさしい社会を創造する
人間の成長と変化のプロセスを実践的に探る
生まれてすぐに言葉を話せる赤ちゃんはいません。しかしほんの数年の間に、大人と同じくらい話せるようになります。また、生まれてすぐはお父さんやお母さんや他の人とコミュニケーションがとれなくても、だんだんととれるようになっていきます。これは、赤ちゃんから大人になるまでの間に何かが変化したと言うことです。
発達心理学では、このような人間の成長と変化を探究します。幼い子どもがどのようなステップを踏みながら言葉を獲得し、数や量の概念を持つようになるのか。また、どのように他者の存在を感じ、愛着を覚えるようになるのか。障がい児・障がい者と呼ばれる人は、発達のどの段階にどのような特徴があるのか。子どもが円滑に発達するために大人はどのような援助をすればいいのか。また、子どもの成長だけではなく、成人が年老いていくときにはどのような心理的な変化が現れるのか。高齢者に特有なものの考え方や心の在り方はどのようなものか。このように、生涯にわたる人の様々な変化と成長を、科学的研究を通して解明します。
例えば、保育所や幼稚園、老人ホームなどに出かけて幼児や高齢者の認知能力の変化を測定したり、大学内のプレイルームで親子の遊び場面の観察を行ったり、障がい児・障がい者施設で実験や調査を行います。
自分自身も含めた人間への洞察力を深める
発達心理学を学ぶうちに、乳幼児や高齢者、障がい児・障がい者に対する見方がガラリと変わる学生も少なくありません。これは、まだ言葉を操ることのできない乳児や、年老いて記憶力が衰えた高齢者も、決して自分とは異なる存在ではなく、自分と同じ成長の過程をたどっている同じ人間だということを知るからです。こうした自覚は、より深い人間理解へとつながり、学びの幅を広げます。
実験や観察を通して得られた研究成果は、幼児教育や学校教育の現場で、子どもの発達段階に合わせた教育・指導カリキュラムの開発や、療育やカウンセリングの手法に反映されています。また、障がい者や高齢者にも使いやすい機器の設計など、人間工学の応用分野でも活かされています。
卒業論文の例
- 加齢にともなう言語流暢性の変化
- 高齢者と青年における友人関係と生きがい
- 幼児はペット型ロボットの長期疑似飼育が可能か?
- 高機能自閉症児への学習支援と社会性獲得支援