人間関係を支える心のメカニズムを探り、よりよい社会のあり方を考える
「ひと」がいることの多様な影響
私たちは、気づかないうちに、周囲の人たちから影響を受けたり、逆に、周囲の人たちに影響を及ぼしたりしています。社会心理学でいう「社会」とは、人と人とがお互いに影響を及ぼしあう「場」のことをいいます。それは、友人や家族の関係といった小さな「場」から、近隣、集団、組織、コミュニティの関係といった大きな「場」までさまざまです。社会心理学では、「社会=場」に着目し、人間関係の中で生じる人の行動や心の変化を、科学的・実証的に解き明かしていきます。
「彼は明るい」とか「彼女は落ち着いている」といった印象は、彼や彼女が持っているものだと思いがちです。しかし、こうした印象がうまれてくるのも、その人の周囲にいる人と比べているからかもしれません。普段は小さいとは思えないような人でも、バレーボールの代表選手に混じると小柄に見えるように、周囲の人がちょっと落ち着いた人だと明るく元気に見え、逆に周囲が元気な人だと落ち着いて見えることがあります。人に対する印象も他者の存在が影響しているひとつの例です。
また、単に周囲に人が存在しているだけで、作業成績やパフォーマンスが影響を受けることも知られています。しかし、これも単純ではありません。1人で練習していたときはできたのに、授業中みんなの前でやったらうまくいかなかったり、逆に、応援団や観客が沢山いると、いつも以上の力が発揮できたりするといったことはないでしょうか。一見矛盾して見える現象の中にも、「社会」に影響を受ける人間行動の法則性が存在すると考えられます。このように、個人の心や行動を研究対象とする心理学において、「心の外」にある社会にも着目するのが社会心理学領域の特徴です。
多様な他者との共生に活かす心理学のあり方を探る
私たちにとって、人間関係は重要です。社会心理学領域では、人が他者の内面を理解しようとする際の認識の仕方の特徴や、豊かな人間関係を築くための対人コミュニケーションのあり方、、コミュニケーション場面において表情や視線といったノンバーバル行動が果たす役割、人と人とのつながりである社会的ネットワークを支える心のしくみなどを学びます。それによって、正しい自己理解や他者理解に基づき、他者に対するあたたかな眼差しをもち、豊かな対人関係を築くことにつながります。
卒業論文の例
- 聞き手のうなずき量と座席配置が話し手に及ぼす影響
- 公共場面の知人の存在が社会的迷惑行為に与える影響 −社会志向性との関連に着目して−
- 対人不安が携帯メールやLINEの返信時期に与える影響
- 表情の表出、読み取りにおける演劇経験の効果